アトピーの皮膚は刺激に弱いので、使用する洗剤や石鹸によっては皮膚炎症を起こしてしまうこともあります。特に、乳児の皮膚は大人の半分ほどの薄さなので、些細なことでアトピー症状が悪化してしまうほど繊細です。
保湿剤や抗炎症薬は病院で処方されますが、石鹸に関しては保護者自身が選ばなくてはなりません。しかし、ドラッグストアには乳児石鹸だけで見ても何種類もの製品が販売されており、どれも「肌に優しい」「敏感肌用」などと書かれているので、乳児アトピーに適した石鹸を見つけるのはなかなか困難ですよね。
石鹸はどれを選んでも少なからず刺激があるので、アトピー肌はお湯だけで洗うのが一番という意見もありますが、アトピー肌に石鹸を使用することで何の効果があるのでしょうか。アトピー肌に最適な石鹸を探すには何に気をつけたらよいのか、注意点も合わせてみていきましょう。
乳児アトピーにとっての石鹸の役割
乳児アトピーの赤ちゃんは乾燥や衣服の繊維の刺激で皮膚炎症を起こしやすいため、普段から細心の注意を払って生活する必要があります。
石鹸で皮膚の汚れを洗浄する行為は大きな刺激になるので、赤ちゃんの肌に石鹸を使用する必要があるのかと疑問を感じてしまいます。
乳児アトピーの赤ちゃんは、普段から保湿剤や抗炎症薬を使用しています。これらは赤ちゃんの肌を守るために必要な薬ですが、長時間皮膚表面に残っていると、ホコリや垢なども巻き込んでアレルギー原因物質そのものになってしまうのです。
特に、保湿剤は主成分が油なので、お湯だけでは落としきれない可能性が高いので石鹸の洗浄力を利用する必要があります。
皮膚に付着したホコリや垢だけならば、手で優しく擦ってお湯で流せば綺麗に除去できますが、皮膚に住み着いている黄色ブドウ球菌などの常在菌はお湯だけでは落としきれません。
黄色ブドウ球菌は常在菌なので全て落としきる必要はありませんが、感染症に掛かりやすいアトピー肌にとっては増殖すると危険なので、石鹸である程度は除菌しなければなりません。
石鹸を使用せずお湯だけで洗っていると、残留してアレルギー原因物質となった保湿剤によりアトピー症状が悪化し、増殖した黄色ブドウ球菌によって感染症に掛かりステロイド剤さえ効かない状態になってしまう可能性があります。肌への刺激は最小限でありながら洗浄力に長けている石鹸で毎日しっかり洗うのが乳児アトピーを悪化させない最善の手段なのです。
乳児アトピーに有効な石けんの成分
アトピー肌に使用する石鹸を選ぶ上で重要視すべきは肌への刺激が少ないことです。赤ちゃんはアトピーでなくても皮膚が薄く敏感肌なので販売されている石鹸には必ず「肌に優しい」などと書かれています。
しかし、肌に優しいと謳っている製品でも防腐剤や香料を使用しているものも多くあるので注意が必要です。
アトピー肌の赤ちゃんには、香料や防腐剤を使用していない「無添加」の石鹸を選んでください。ただし、無添加と表記されている製品にも天然由来の小麦などを使用している可能性もあります。
アトピー肌と一括りにしてもアレルギー反応を起こす原因は赤ちゃんによって異なるので、食物由来の成分が使用されている場合には特に注意しましょう。新しい製品を試すときは、腕や脚など一部分だけにパッチテストをして様子を見てください。
皮膚の炎症を悪化させないためにも皮膚に付いた汚れをしっかりと洗浄する必要がありますが、石鹸で身体を洗う時にはどうしても皮膚に刺激を与えてしまいます。
アトピー肌の赤ちゃんに使用する石鹸には洗浄時の刺激を和らげてくれる「ビオチン」「オレイン酸」を含んだ製品を選ぶと安心です。
オレイン酸は石鹸に使用される油分の中で最も肌への刺激が少なく、保湿効果まで期待できる優れモノです。主にオリーブオイルや椿油に多く含まれている成分なので、製品の成分表に「オリーブ油」や「椿油」と記載されているかどうか確認しましょう。
石けんの種類別メリットデメリット
石鹸には固形石鹸・液体石鹸・泡石鹸の三種類がありますが、製造方法や使われている成分が異なるので肌への影響もそれぞれです。アトピーの赤ちゃんにはどのタイプの石鹸を使用するのが最適なのでしょうか。
固形石けん
固形石鹸の主な主成分は脂肪酸ナトリウムで、洗浄力の強すぎる合成界面活性剤が含まれていない天然由来の原材料だけで作られています。水に溶けにくく少量ずつしか使えないため液体や泡のように石鹸を出し過ぎてしまうことがありません。少量の石鹸で肌を洗うことができるので、皮膚への刺激も最小限に抑えることができるのです。
販売されている固形石鹸のほとんどが無添加であり、三種類の中で最も低刺激なのでアトピー肌の人には最適な石鹸だと言われています。
しかし、店頭販売では種類が少ないことと、泡立てるのに時間が掛かることがデメリットです。特に赤ちゃんの入浴は風邪をひかないよう手早く済ませたいので、固形石鹸を使用する場合はすぐに泡だてられる準備が必要です。
液体石鹸
液体石鹸は固形石鹸の主成分である脂肪酸ナトリウムよりも少し刺激の強い「脂肪酸カリウム」という成分で作られています。
脂肪酸カリウムだけであれば問題はありませんが、液体石鹸には香料や防腐剤を混ぜた製品が多く販売されているので注意が必要です。ただ、脂肪酸カリウムには保湿効果があるので乾燥肌にも安心して使用できます。
液体ソープは水に溶けやすく素早く泡立てることができるので、赤ちゃんを洗う時にも簡単に使用できます。
最近では、固形石鹸と同じく無添加のベビーソープも多く販売されるようになりましたが、手作りではなく機械で大量生産されている液体石鹸には添加物が含まれていることもあるので成分表を確認しましょう。
赤ちゃんでも使えるボディソープとしておすすめなのは、しみずの無添加ボディソープです。アトピーの改善効果が期待されているビオチン成分が配合されており、無添加・国内生産という点において、赤ちゃんでも安心してお使いいただけるポイントです。
泡石鹸
赤ちゃんのデリケートな肌を刺激しないためには成分にこだわることも大切ですが洗い方にも注意が必要です。肌に優しい固形石鹸や液体石鹸を使用していても、十分に泡立っていない状態で赤ちゃんの肌をゴシゴシ擦ると強い刺激になります。
泡石鹸はプッシュした瞬間から十分に泡立った石鹸が出てくるので泡立てる必要がなく時短になります。泡は刺激から肌を守るクッションになるだけでなく、汚れや古い皮脂を包み込んで洗い落としてくれる働きがあります。
成分に関しては、液体石鹸と同じく添加物や防腐剤を使用している製品もありますが、無添加の泡石鹸も販売されているので肌への刺激を抑えることができます。特に沐浴が必要な新生児期はなるべく早く入浴を終わらせたいので無添加の泡石鹸が便利です。
身体の洗い方
赤ちゃんの肌は大人の半分の薄さであり、アトピー肌の場合は非常に些細な刺激にも反応してしまうほど敏感なので、洗い方にも注意が必要です。
赤ちゃんの入浴にはガーゼや乳児用スポンジを使うことが多いですが、布やスポンジで肌を擦る刺激は乳児アトピーを悪化させてしまう危険性があります。
手と赤ちゃんの皮膚との間のクッションになる程度に、石けんを泡立ててから、優しく赤ちゃんの身体全体を洗いましょう。スポンジよりも低刺激ですが洗浄力も弱いので、首やわきの下や太股の付け根など垢が溜まりやすい部分にも指を入れて汚れを落としましょう。
シャワーを嫌がる赤ちゃんが多いからと言ってお湯を少し掛ける程度で入浴を終わらせてしまうと石鹸カスが皮膚に残りアレルギー原因物質になります。
弱めの水圧のシャワーを全身にゆっくりと回しかけながら、石鹸が溜まりやすいシワの部分を指の腹で優しく撫でて洗い流しましょう。
入浴後は、体温が高く時間が経つと、水分が蒸発して乾燥してしまうので素早く保湿を行ってください。ステロイド剤など抗炎症薬を処方されている場合には、保湿した後に薬を塗るようにしましょう。抗炎症薬を塗ってから保湿剤を塗ると、抗炎症薬が身体中に広がってしまいます。
赤ちゃんの肌に合った石けん選びを
保湿剤の油分や抗炎症薬はお湯で流すだけでは落とし切ることができません。石鹸で身体を洗うと黄色ブドウ球菌などアトピーを悪化させる原因となる常在菌の増殖を防ぎ、保湿剤などもしっかり洗い落とすことができます。オレイン酸を含んだオリーブオイルを原材料に使用した石鹸が最も肌に優しく保湿効果にも優れています。
石鹸には固形・液体・泡の3種類があり、最も肌に優しい無添加製品が多いのは固形石鹸です。固形石鹸は少しずつ水に溶けるので余計に石鹸を使わなくて済むメリットもありますが、泡立つのに時間が掛かるため手早く済ませたい赤ちゃんの入浴には少し不便です。
最近では、液体・泡石鹸にも無添加の製品が販売されているので、成分表を確認し保護者が使いやすいと思うタイプの石鹸を選びましょう。
ガーゼやスポンジでアトピー肌を擦ると強い刺激になるので、赤ちゃんの身体は手で優しく撫でるように洗って下さい。石鹸カスの残りやすい脇の下や首などは指を入れて洗い残しがないように気をつけましょう。石鹸を使用した後は水圧の弱いシャワーで赤ちゃんの全身をしっかり洗い流すことが大切です。