誰もが密かに気にしてしまう体臭。
アトピー性皮膚炎にかかっている人も例外ではないと思います。
それでは、アトピー性皮膚炎が引き起こす特異的な体臭と言うのはあるのでしょうか?
アトピーと体臭の関係・改善策について考えてみましょう。
アトピー性皮膚炎の症状は、主にかゆみと湿疹です。
乳幼児、子供、そして大人と成長に伴って、炎症が現れる部位は変化していくという特徴がありますが、その症状自体に体臭が生じる原因は無いと言えます。
それでは、アトピー性皮膚炎の患者さんが体臭として気にしてしまいがちなことはどのようなことなのでしょうか?
アトピー性皮膚炎治療の外用薬
アトピー性皮膚炎の治療には、炎症を抑えるための外用薬と皮膚のバリア機能を高める保湿剤、そしてアレルギー反応やかゆみを抑える内服薬を使います。
どうもこの外用薬や保湿剤を皮膚に塗布したときに本人が感じるわずかな臭いが、周囲の人にも感じられてしまうのではないかと気になってしまうケースがあるようです。
似たような事が、ニキビ治療などを含む、他の皮膚疾患の治療をしている患者さんにもありことであり、心配しすぎることはありません。
あくまでも体臭ではない治療薬の臭いであり、それも周囲の人にはほとんど感知されない程度の臭いにすぎません。
フケによる頭皮の臭い
アトピー性皮膚炎の患者さんは、頭皮もアトピー症状が出ていて、乾燥しがちな頭皮からでるふけ、つまり乾性フケが多くなりがちです。
フケが多いと細菌の栄養分となって臭いを生じやすくなり、「頭皮臭」が強くなり体臭になる可能性はあります。
頭皮の炎症が強いならば、医師の指導のもとに適切な治療をする必要があります。頭皮に使いやすいようにローションタイプのステロイド外用剤などを使います。
症状が軽い場合には、ひどくならないようにシャンプーを選ぶことで、フケを予防して体臭を防ぐとよいでしょう。
シャンプーは、洗浄成分のタイプ別に「石油系」「石けん系」「アミノ酸系」の3つに分けることができます。
お手頃価格のものには、石油系および石けん系が多いのです。
石油系と石けん系のシャンプーは、泡立ちがよく、洗浄力も高い特徴があります。そのため、髪の毛や頭皮に必要な皮脂分などが、必要以上に洗い流され、乾燥が助長されるという傾向があります。
その一方で、「アミノ酸系」のシャンプーは、マイルドな洗浄力で低刺激なので、髪や頭皮に優しい洗い上がりになります。
ご自分の肌に合うか合わないかが一番大切なことですが、アミノ酸系と言われるシャンプーの方が刺激が少ないので、アトピー性皮膚炎の方には向いていると言えるのではないでしょうか。
衣類の臭い
近年は、ゴールデンウィーク頃には夏のような暑さが到来したりして、夏日を超える日数が一年を通して多い年が増えてきました。
異常気象と言っていますが、もはやそれがスタンダードと思えてくるほど、毎年猛暑・酷暑がやってきます。
それだけ、衣類の臭いや汗、体臭の臭いが気になることも増えていると思います。
衣類の臭いの対策としては、除菌をうたう衣料用洗剤や香りの良い柔軟剤もたくさん出回っています。
しかし、アトピー性皮膚炎の方はすすぎをしっかり行うことで肌への刺激を防ぐように注意しましょう。
また、肌に合わないことを感じる場合は、洗剤を変えてみて、影響のほとんどないものを探すことが必要になることもあるかと思います。
臭いの対応策
汗臭いという言葉があるように、汗は臭いからできるだけかきたくないと思う人が多いと思いますが、実は汗腺から分泌されたばかりの汗はほぼ無臭なのです。
汗が皮膚常在菌に分解されることによって体臭を発生するようになります。
そこで、制汗・防臭化粧品は、この汗が嫌な体臭を発生するメカニズムに対応する以下のような機能を持っているのです。
制汗・防臭化粧品の機能
1. 制汗
収れん作用を持つアルミニウム塩などで汗腺にプラグをすることで汗が出るのを抑えます。
2. 殺菌
殺菌効果のある成分を配合することで、皮膚常在菌が汗を分解して臭いを発生させることを防ぎます。
3. 消臭
皮膚常在菌が分解して出てきた低級脂肪酸などの臭いのある物質を中和したり、包み込んだり(抱接)することで消臭します。
4. マスキング
好ましくない体臭を、良い香りで覆い隠すようにします。最近は好ましくない香りと良い香りが混ざることでさらにいい香りにする技術も出てきています。
上記のような機能を応用した制汗・防臭化粧品は色々な剤型があります。どのような種類があるでしょうか。
・ロールオンタイプ
容器先端のボールが転がることで、液剤が皮膚に塗布されます。直接しっかり塗り付けられるので、高い制汗・防臭効果が得られます。エタノールが多く含まれているものが多く、さらっと清涼感があります。エタノールを好まない人には乳液タイプもあります。
・スティックタイプ
油性基剤の中に制汗物質や抗菌成分、また、さらさらするように粉体などが配合されています。直接塗布することで密着し、高い制汗・防臭効果が得られます。
・パウダースプレー
スプレー缶に汗のべたつきを軽減させる粉体や制汗・防臭成分が配合されています。
噴霧したときの冷涼感や、パウダーのさらさら感などが好まれ、一番使用されている剤型です。
ただし、噴霧した成分の全量が皮膚に届いていないので、ロールオンやスティックなどに比べて効果は劣ります。
・ミストスプレー
ポンプやトリガータイプの噴霧容器のもので、液剤を噴霧します。エタノールによる清涼感があったり、パウダー入りの場合は汗のべたつきを軽減したりすることなどが好まれて使われています。パウダースプレー同様、噴霧した一部が皮膚に届かずロスするのでロールオンやスティックなどに比べて効果は劣ります。
・パウダー
粉体をパフで身体に塗布します。汗のべたつきを抑えます。
以上、制汗・防臭化粧品について見てきました。アトピー性皮膚炎の方はエタノールの多く配合された製品などは刺激が強かったり、乾燥が助長されたりして好ましくないものもあるかも知れません。
ご自分の肌の状態とよく相談して選びましょう。
もし、自分に合った製品が見つからない場合でも、かいたばかりの汗は無臭なので、こまめに拭き取るようにしましょう。
かいた汗をそのままにしているとアトピー性皮膚炎のかゆみもまねくので、その意味でも汗の処理はまめにしていくことが大切です。